葉桜が来た夏

第14回電撃小説大賞<選考委員特別賞>の本作。200X年(何か微妙に懐かしい感じがする表現である)宇宙より琵琶湖に、巨大な十字架型宇宙船が飛来。そこに乗っていたのは、すべて圧倒的な身体能力とテクノロジーを持つ女性型の宇宙人「アポストリ」。激しい戦闘を経て和解した二つの種族は、琵琶湖のほとりの彦根市に壁に囲われた「特区」築きそこで共存を開始した。その共存のシステムの根幹となるのが、”共棲”というアポストリと人間の共同生活。過去のある事件がきっかけでアポストリを恨む主人公「学」は特区の要職に就く父親の命によりアポストリ「葉桜」共同生活をすることが決まる。

まあ、読むきっかけのひとつに、舞台が滋賀県(の湖東側)だったという、実に滋賀県民的な理由はあるわけです。といっても彦根市はそれほどなじみがない街なので、せいぜい主人公が通っている高校のモデルがわかる程度でしたが(彦根東校ですね。進学校ですね。だからなんだという程度です。

SF的な設定の上にラノベのキャラクター性が上手く乗って、一巻完結のデビュー読み切りとしては良質の作品だと思いました。まあ、SF設定としてはとってもたくさん突っ込みたいところはあるのですが。そこは流して、少年と少女の恋愛要素が絡まない。お互いを個人として認め合う過程を上手く描いているところが好印象でした。

大きな不満点としてはページ数の関係なのか、主人公の心境の変化(過去の怨念を乗り越える過程)が言葉足らずには感じたところはありましたね。


いろいろと過去話の展開や、これからの二人についてなどかけそうな感じなので続編もありそうであるけど、作者はもっとSF的なものを書きそうな感じなのでよりハードなヤツもありではないかなあとも思います。