幸福論 輝くもの天より墜ち 九十九十九

授業や発表で忙しくて、なかなか書くところまで行かない今日この頃です。とりあえずいくつか簡単に


幸福論―“共生”の不可能と不可避について (NHKブックス)

幸福論―“共生”の不可能と不可避について (NHKブックス)

社会学宮台真司と彼の弟子に当たる鈴木弘輝、堀内進之介による鼎談集。
いかなる社会においても、何らかの選別と排除を含む以上、万人にとっての「共生」は不可能。
という前提から出発し、ではこの社会において「共生」とは「幸福」とはということに社会学的にアプローチしていく。
そこでは、宮台は主として社会全体を把握できるエリートが機能主義的な前提で、ある種の情報操作を行ってでも、社会の感情の安定を保証するような社会瀬系が必要と説く。
それに対して鈴木、堀内は「社会全体を把握できるエリート」という概念の恣意性に注目し、宮台に反論。結局それは自称エリートによる専制を招くとして、むしろ「ラディカルな改良主義」としての実践を進めるために、多様な視座をできるだけ多くの人が獲得することが重要だとする。

個人的にはやはり宮台の主張は極論過ぎる(むろん、宮台の場合「あえて」言っているところが過分にあるにしろ)と感じるし、どちらかというと堀内・鈴木のほうの議論に賛成する。ただ、根本的なところで両者とも明確で具体的な社会デザインのプランは提示していないし、そのあたりは自分自身も含めてこれからの課題と言うところだろうか。何にしろ非常に刺激的な議論が楽しめた


翼をもつ美しい妖精のような種族が住む銀河辺境の惑星ダミエム。連邦行政官のコーリーとその夫で副行政官のキップ、医師バラムの三人は、ダミエム人を保護するため、その星に駐在していた。そこへ〈殺された星〉のもたらす壮麗な光を見物しようと観光客がやってくるが……オーロラのような光の到来とともに起こる思いもよらぬ事件とは? 『たったひとつの冴えたやりかた』で言及されていたファン待望の物語、ついに登場 (ハヤカワ・オンライン

まず、世界観が素晴らしい。妖精のようなダミエム人の描写や、生活の様子なんかを上質の比喩を使って編み上げていくあたりは、個人的にはSFの醍醐味を味会わせてくれたように思う。プロットは割にシンプルで、館モノのミステリの面持ちもあったり(はじめにコテージの図版付きのあたりとかw)
序盤は観光客のキャラで引っ張りつつ上記の描写も交えてゆったりと展開。
そして、ダミエム人の過去の悲劇を軸に一気に展開される中盤から後半は一気に読ませる力があった。とりあえず単純なジェットコースター的エンタメとして満足できる一冊。

そのほかにも、フェミニズム的(あえて言えばポストコロニアル的)な視点から描かれる、ダミエム人の過去をはじめとする人間の醜さのあたりは、さすがティプトリーとつぶやいてしまうでき。やっぱりティプトリーの作品は、SFの(異星人、異星環境を描くという)ある種潜在的な暴力性と、またその前提を異化する発想力の両方に自覚的なように思えるのですね、私には。*1


あと、「たったひとつの冴えたやり方」で言及されているとあるけど、そのあたりすっかり忘れている自分がちょっと悲しい。


九十九十九 (講談社文庫)

九十九十九 (講談社文庫)


傑作。とりあえずその一言。JDCとか清涼院流水とかはこの際どうでもいい(よくないが) 舞城による舞城ファンのための最高純度の舞城小説かな。
またそのうち詳しく追記。頭くらくらするよ……

*1:もちろん、そういった視点を抜きにして純粋にSFとしてという見方もあるだろうし、それも全否定はしないけど。個人的にはそのあたりを「なかったことにして」という語りには違和感を覚える。